1 EV製作・素材手配

取引先(得意先)2輪店の店主より、小型バイクの電動化したモビリティがほしいとのことと、当社のEV試作実験がマッチした結果、プロトタイプを製作する運びとなる。
エンジン不動車を探し、廃車回収センターから購入。

2エンジン部品の撤去、動作解析

車体ECU以外の電動化に不要なエンジン、燃料タンク、トランスミッション一式駆動系(リアホイール含む)を取り外し、電装回路の動作確認、
燃料ポンプを付けないとウインカー信号からエラーコードを吐き出すECUと判明、 ※ウインカ点灯がECUでも制御される。

3 純正ECU 、配線の全撤去

疑似抵抗を入れて正常に回路が動作する予定で、エラーコードは出なくなったが、ヘッドライトが不灯。
純正スイッチパネル不備(ステアリングスイッチ内部が断線)判明、純正ECU撤去、フレーム以外の機材、全ての電装配線を撤去。

4撤去エンジン、駆動系一式の重量測定

EV化する際、車体総重量と純正時の全備重量は重要な設計データのため、クレーンスケールにて正確に計量。
釣り上げ途上の画像のため数値(単位)が違っていますが
※kgではなくニュートン(N)表記
設定を変えて、 31.75kgを計量。

5 Pb(鉛)バッテリーレス化の準備

EV化の場合、メインバッテリーが高電圧で大容量、通常の補機類ランプ12V系を DCDCコンバータにて供給。
開放電圧12.15V(無負荷で2.2W消費)
コンバーターの特性チェックとDC安定化電源とのマルチメーター計測器との電圧差異もチェック。 ±0.1V以内で問題なし

6 DC安定化電源での灯火類一式回路テスト

純正配線と制御ECUを全撤去した後、配線回路を再設計、
ウインカーリレーとヘッドランプリレーを用意し、電動車として走行時の電力消費を極力減らす目的で、全点灯回路LED化、通常(最大)消費電力140W+のところ、15W程度に抑えた

7 モーター制御ECU搭載位置の決定

本来ならば、低重心を求めて床下燃料タンク部分を電池格納箇所にしたいところ、タンクの容積が4L程度しかなく、走行想定距離80km〜100km程度の電池が積めない。選定した電池パックの容積が7L前後。 タンク部分は電装系を集中配置する設計とした

8 前後サスペンションの更新

前後ともに手配した車両は前後共ショック用オイル抜け。
ダンパーが完全に終了し、オーバーホールも不能で使用するスイングアームの干渉が有るためオフセット用ステーと純正より短いダンパーで実質20ミリ全長伸ばし、フロントフォークは35ミリ伸び、タイヤの扁平率を調整(外径)し前後10ミリ以内に収めた

9 モーターユニットの仮組と空転テスト

 モーター駆動系一式と、コントローラ(ECU)を簡易接続で動作テスト。 少し、ホイールの回転バランスの悪さが気になる。
タイヤを付ければ外周のモーメントが大きいから、こんな小さなホイールは振動(バランス不良)は起きないだろうと甘く見積もっていた。

10 手配した電池の分解・再組み立て

72V30Ahという大きめのバッテリーパックは電動車が多く走っている中国が主たるマーケット。 アマゾンで手配するも容量水増しバッテリーと発覚! サイズも容量も違う詐欺商品で返金は即座に成されたが、電圧は正規の数値を出していたので分解してみると表記サイズの1/5容量の電池が出現→再組み立てして有効利用。

11 再組み立て電池の負荷テスト

電池の負荷をなるべく大電流で数分間流し、発火。発煙がないか水バケツを用意し、電流テスト。
負荷抵抗を繋げるという大げさな回路は使わず、トースターが10Ω抵抗のため 開放電圧80V近辺の電池には都合の良い通電テスト環境を構築。 内部抵抗275mΩを電流値と電圧降下で算出。

12 灯火類の実機への搭載

フレームへの灯火類 消費電力削減のため全LED、
従来までのハロゲン電球式、消費電力は全点灯時130〜140W
LED時のDC安定化電源にて消費電力13W前後、
一般に言われているように、消費電力は1/10を確認。
配線長さの微調整を進める

13 電装系一式を組み込み

軽量化目的でPb(鉛)バッテリーレス仕様のため、
DCDCコンバータ経由で灯火、電装系を動作させる回路とした。
72V駆動系、 12V電装系は共通アース設計。

14 サージ対策と容量の更新

DCDCコンバータの電源投入時、リレー回路接点スパーク低減目的と、突入電流抑止のため、スパークキラーの大容量化を実施。

15 スイングアーム部位の加工、調整

フレーム側取り付け幅の拡大(2mm切削)
純正取付ボルトがM10、モーター側シャフトがΦ12、
OD12、ID10シャフトの追加により、純正ボルトの互換を
持たせつつ、軸心を維持しながら接続

16 モーターコントローラー解析、設定

組立完成後も実走セッティング時に便利なBluetooth経由・電話機でのコーディングが可能なタイプ。
モーター回転域別トルクマップ、応答時間、回生ブレーキなど数十項目の設定とプログラミング。

17 ホイールバランスの調整

空転テストの後、異常に振動が大きくホイールを取り外し、バランス調整。 仮のウエイトを取付けてみたところ、60g近くの重心ズレが起こっていた。
※ 黄色いテープは最も軽い箇所をマーキング
バランスウエイトを手配し、60g分貼り付け。

18 テスト用電池で公道の実走行

ほぼ組立が済み、販売予定オーナーより予め手配していたナンバーを取付け、公道での実走行。
試験用電池、「11項」での再組み立てした電池での仮テストのため、走行距離はトータルで60km程。
満充電から途中で電池切れまで走行した時の記録も取り、
航続距離はおよそ20km

19 電池容量の測定

 分解、再組み立てした18650電池が、4p20s のため、18650の一般的な容量3Ah、と仮定すると 72V12Ahの電池であるが、充電時間と一定電流充電の充電器であり、一定電流充電で、DC側電流も計測し実質120W充電、電池切れからのフル充電は3回充電ログを取り、毎回ほぼ5〜5.5hで充電自動停止。100%充電終了30分前には更に電流が減るため、4.5hまでが定電流と仮定、
実バッテリー容量は 550〜600Whと推定。

20 実走行用バッテリチェック

充電入力では500W〜600W入力、一定電流充電方式なので、充電開始から充電量100%寸前までは ほぼ7.25A一定、
満充電自動停止の20分前くらいで電流低下。
0〜95%程度まで4時間程度(公称容量2.5kWh)
大容量電池のため0%までは使い切らず、15%までは最大電流50A流しても電圧降下エラーは
発生しないことを確認。
電池切れから満充電までは、計算上4時間半以内。

21 車体重量の計測

電動化バイク組立後の総重量をベース車両の、ホンダDIO当時のAF56型と比較。
型式と車台番号からスマートDIO、BA-AF56より、
WET重量(ガソリン、油脂類含む重量)76kg
当社試作機 67kg
約9kgの軽量化を達成

22 スタンド連動SW

 エンジン撤去により、両足スタンドは同時に撤去で、片足スタンドを増設。
イグニッションON後にスロットルを開けると直ぐに走り出すことが出来るため、スタンドたたみ忘れで走行中に道路、障害物と接触、スタンド破損や事故防止に、メインスイッチに連動したスタンドスイッチを装備

23 電池性能、航続距離測定

 走行条件を設定し複数回モードを変えて500km程度走行。
電池容量%表示が100%から半分までは早めに減算する傾向
例:20km走行、27%減、残量50%以下の場合 25km走行18%減、 ほぼ裏路地固定で40km/h以下の低速走行をしていると、満充電近くでも1%1kmくらいの消費量。
※ 車体の軽量化が効いていると思われる。

24 トルクマップ(出力調整)

 モータは一定速度(回転数)を超えるとトルク低下が発生し、最大回転数はトルク出力がゼロ
(無負荷最大回転数)となる。
回転数を上げるには逆起電力を抑止するための「弱め界磁制御」を行う。 3500rpmまでが実効域なので、無駄な電流を抑制し効率よく回すためのトルク調整を優先する。

25 走行性能テスト

 トルクマップも調整し終えて、数回の発進加速テスト、0〜50km/h 6〜7秒 最高速度 60前後、
上記、GPSアプリでの計測60.62km/hは追い風が吹いていたので参考値。
概ね無風状態なら59、58km/hが暫定値。
純正アナログスピードメータでは60km/hの指針を振り切る程度(変速機が無いので高速域はトルクが落ちていく)

26 BLDCモーターの波形確認

 2ch携帯用小型オシロなので、uvw相の3ch同時観測が出来ないが、 (画像はu、v相の波形)
ベース信号13.9kHz、電圧幅75.6V(電池電圧)、スロットルを開けると各相間で位相が離れつつパルス幅を可変する波形なのでPWM変調制御方式の様子。

27  走行テストを約700km実施

 モーター出力調整、トルクマップセッティングと電費の調整、特に回生ブレーキ側の充電方向の制御は大電流を流せば一時的な急速充電モードとなるため、なるべく電池に負荷を掛けないように、今回の電池の充電器電流に合わせ、最大10A前後での制御を数十回の走行で充電効率と減速具合を考慮し増減させ、回転域別での調整を実施。

28 納車直前の長距離走行実施

 普段の街乗り距離でのモータートルクセッティングは30km程度の走行テストしかしていなかったが、電池の実走行での航続距離を割り出すために、満充電後50km以上の走行テストを経路充電を含めて実施。
51km走行で残量計62%により、設計想定の満充電からの航続距離は100km以上を確認済。

29 電池容量と実走行距離を算出

公道での電池残量0%、走行停止までのテストは他の交通に迷惑なため、満充電から30km以上、各領域の充電残量、3箇所データをAIに入力し航続距離の計算を実施。
出力されたマクロを表計算ソフトに入れグラフ化、
縦軸が残量%と走行kmとなってしまっているが計算上
残量10%時点で108kmの航続距離を達成。

30 実地テストを含めた納車

当社で800km以上はセッティングを含めた走行をしているが、いよいよ実際の一般走行での耐久試験を含めた納車。
今後、マイナートラブル、初期不具合含め信頼性と耐久性の実地試験を行い、データを収集していく。